活用事例 & コラム
2016.07.11
一般社団法人の有効性~残余財産の帰属~
公益法人については、旧法時代に相続対策の一環で静岡の某財団法人をかなり苦労して設立した経験があります。その財団は、現在とてもいい財団になっていて静岡県を代表する公益法人として、県知事表彰を授与されました。公益法人改正に伴って、一般財団法人に組織変更しましたが、公益目的支出計画を今後何十年も申請しなければならない状況です。
公益法人の制度改正に伴って、一般財団法人・一般社団法人が新たに作られました。
公益法人を設立する際、冒頭でかなり苦労して設立したと書きましたが、当時、公益法人を増やさないようにしていたのではないかと思うほど県の審査が厳しかったのです。基本財産にして3億円以上ないとできませんでした。それは公益事業を安定して永続的に運営するための基本財産を要求されるからでした。
財団法人の定款にあたるのが寄付行為で財団法人の憲法みたいな法律文書を作成するのですが、その中に法人の解散時に残余財産がある場合は国又は地方公共団体もしくは同様の事業を行う公益法人に寄付する規定があります。それだけでなく、役員構成も寄付者の親族や、寄付者の属する法人の従業員の割合の規制もあり寄付者の意図する決定にブレーキがかかるように制度設計してありました。それで、その財団の所有する財産には相続税がかからないのです。その財団の所有する財産は誰のものでもないからです。これが民法の定める公益法人の形でした。
5年前の公益法人の制度改正に伴って、一般財団法人・一般社団法人が新たに作られました。
一般財団法人は基本財産300万円、設立時7名で設立できますし、一般社団法人は設立時社員2名、その後は1名でも可能で、出資金はなしで設立可能となりました。これは、NPO法人が簡単に作られるようになり、草の根的に公益事業を公益法人に広めてもいいのではという考えに基づいていると思います。
これまでの公益法人制度と違うのは、一般社団法人が解散する際に残余財産がある場合は定款に定める通りになるのですが、その定款には社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めをすることはできない(一般法人法11条2項)とあり、法は社員への財産の分配を受けられない規定となっていてこれはこれまでの公益法人の枠組みと同じです。
しかし、残余財産の帰属について定款で定めがない場合はどうなるでしょうか。その場合は、社員総会の決議によって定めることとされています。(一般法人法239条2項)それでは、一般社団法人を解散しますから社員総会を開催して残余財産を社員に分配する決議をした場合にどうなるか。これは、社員総会の決議によって社員に対して残余財産を帰属する定めをすることもできると解されているため、社員に帰属できるということです。そのあとの条文には、社員総会で帰属が定まらない残余財産は国庫に帰属することになっているのでその部分は従来の規定を踏襲しているように思えます。
違うのは、社員総会の決議によって社員に残余財産を帰属させることが可能となっているという点です。
これは実は、大きな変更点なのです。しかも一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の本文に記載されているわけです。税務通達とか解釈の違いなどで度々変更になるようなものではなく、変更しようとすれば法律改正をしないといけない訳ですが、2008年12月に施行された法律を近年改正する可能性は低いと思われます。
なぜ、残余財産の帰属の道を作ったのかその趣旨はわかりませんが、法律はそのようにできています。
ならば、今後一般社団法人の活用は有効だと思います。
【参考】一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第五節 残余財産の帰属
第二百三十九条 残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。
2 前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、
清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める。
3 前二項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。